no.206

舵のとれない舟を行くことだ
まぶたを開けると
やがて血が透き通る
瞳孔と満月が重なり合う

再会を約束した十代
思い出してしまう時がある
肌身離さなかったつもりでも
ひたひた沁ませたつもりでも

水の流れるほうへ
月が満ち欠け陽が融けるほうへ
あらゆる物質が棘をふくみ
僕たちは柔らかさを呪う

夏休みは額縁の中
眠った隙に動き出す風景
さんざめきを恥じて
緑と青のまだらが狂暴する

秘密は
誰にも言わずに持ち歩いた
同じような君と目配せし
明かし合うことのない距離

その瞬間
その瞬間にも消えていく
生まれるための痕跡として
また来る一日の手がかりとしてだけ

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