no.82

いちどだけさわって
忘れさせないまま
ぼくだけが消えたい
ひとりで死ぬんじゃなくて

ほんとうの夜を知っていた
月も星もないまっくらのこと
怖いことなんかひとつもなくて
どこよりも優しいもののこと

パステルカラーの水玉が
空にいくつも浮かんでた
ガラスのコップごしに
あの瞬間をいまも思い出す

なんども何度も
繰り返しくりかえし
始めては終わらせて
終わるたびにまた始めて

嫌いなままでよかったのに
いつかいなくなるならって
行き場のない声に埋もれてやがて
ぼくを後追いするきみを見ていたい

いつでも単純だった
たったひとつだった
目を閉じればいいんだった
きみの指先がいま届こうとする

血も流せないで
涙もぬぐえないで
引っ搔き方も知らないで
ぼくしか知らないきみの手がいま

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