いちどだけさわって
忘れさせないまま
ぼくだけが消えたい
ひとりで死ぬんじゃなくて
ほんとうの夜を知っていた
月も星もないまっくらのこと
怖いことなんかひとつもなくて
どこよりも優しいもののこと
パステルカラーの水玉が
空にいくつも浮かんでた
ガラスのコップごしに
あの瞬間をいまも思い出す
なんども何度も
繰り返しくりかえし
始めては終わらせて
終わるたびにまた始めて
嫌いなままでよかったのに
いつかいなくなるならって
行き場のない声に埋もれてやがて
ぼくを後追いするきみを見ていたい
いつでも単純だった
たったひとつだった
目を閉じればいいんだった
きみの指先がいま届こうとする
血も流せないで
涙もぬぐえないで
引っ搔き方も知らないで
ぼくしか知らないきみの手がいま