No.856

冬の光は透明だけど
好きな色を変えてしまう
好きな人を変えてしまう
きみの好きな私も、たぶん。

変わらないでいると
誰かは救われると思っていた
変わらないことで
変わらないままで

救うことも救われることも
本当はできていなかった
「ありがとう」という言葉には
優しい、

ヤサシイ、
「救えてないけどね」が
隠れていた
推測が下手で気付かなかったな

たくさんの嘘があって
傷つけたり傷ついたりする
嘘だとばれなかった嘘もあって
嘘が世界や心をうまく回す

きみの世界は、どう?
私の世界は、こう
今、冬の光が照らしているのよ
眠れないきみから奪ったものだよ

3+

No.855

もう届いてる、

きみが言う
手はもう届かせられる
もし届かないなら
あなたが拒んでいるだけ
本当は途中が気持ちいいだけ

ぼくは分からない
いつまでも分からない
分からないでいたい
痛みを消す理由を
知りたくない

窓ばかり広い部屋で
帰宅という言葉を練習した
ノートに何度も書いていると
応えるように風が吹く
帰りを待っている
帰りを待っていて

また交わるように信じてる
平行線は少し歪んでいて
言い訳を通用させる
だからいつまでも現実を見ない
許されないことを許している
愛されない今を愛している

4+

【小説】愚かの軌跡

手のひらを見た。ずっと一緒だったのにあまり見たことはなかった。そんなことが多い。そんなことばかりだ。

冬に向かう午前九時。壁にかけられたままの制服が笑ってる。

世界はたくさん開かれていて、開かれているから、居場所の無さに気づいてしまった。こんなにあるのに。こんなに幸せなのに。

あとはもう死ぬしかないんです。

理由を探られたくないから他殺がいいです。僕を殺した人に不幸になって欲しくありません。協力をします。

春に買った便箋に思ったままを書き連ねる。携えたままあちこちを彷徨い、ついには紙飛行機にして歩道橋から飛ばした。夕暮れ。

偶然を待ったのに、その羽根は生き物のように自ら羽ばたく。おまえも、おまえも、僕を連れて行かないんだな。

なにしてんの。
話しかけるのはもう君くらいだ。
やあ変人。
振り返ったら涙がこぼれる気がしてやめにした。

「やめにしたら」。君が言う。「なにを?」。つい顔を見てしまった。怪訝が勝り涙はこぼれなかった。「いや、もしそこから飛ぼうとかしてたら」。

君は全く見当違いだったが、そう見えたならそうなんだろう。

「ばか?痛いのは嫌だよ。不確実なのも」。

そうだろうね。

佇む君の右手には一日二人ぶんの食事。
君は、君は、かわいそうだ。
自分がいても報われない恋人を持って。
存在理由を探し続ける愚か者を繋いで。

「一緒にごはんを食べよう」。
「明日も生きるよ」。

紙飛行機が夜に向かって流れて行く。
無数の星を縫ってさらなる高みへ吸い込まれて行く。

そんな夢を見た。
こんな現実の底から。

4+

No.854

仰向けに見た電球
魚がくれたお守りみたい
気づかなかった
忘れていたよ

あかりを消したい
照らし出すものを
ぼくは醜い
君も、そう思う?

平気そうだね
星は傷つかない
時間は流れる
立ち止まる理由は無い

幼なじみが死んだ
最後に会った時
喧嘩をしたようだ
手紙でぼく思い出したよ

人の感情を覚えていられない
悲しみも絶望も自分のため
優しいことを免罪符に裁くの
そういうところ嫌いだった

自分も他人も否定せず生きる
傷つくのも傷つけられるのも嫌
いつまで柔らかなままだろう
大人になれない子どももいるんだね

日が短くなる午後
太陽をポケットに沈めて
明日の朝きみを探しに行く
世界の明日を奪っていく

3+

【雑記】どうでもいいや

冬の朝からハーゲンダッツもしくはサーティーワンを食べる生活を送っている私である。贅沢のレベルは人それぞれなので心からこれで良いと思っています。

当たり前なのに忘れがちなこととして「人っていつか死ぬなあ」と最近思う。自分も、自分の周りの人も、そのへんの見知らぬ人も、苦手な人も、善人も悪人も、みんな平等にいつか死ぬなー。と思って一日を始めるけどお昼くらいには普通に忘れてて眠気を感じたりするなど。

でも死んだことがなくてあまり想像つかないし、想像したって仕方のないことだから忘れるようになっている。仕方はないけど意味はあるかも知れない。「いつか死ぬなー」と心の片隅で思っておけば、この選択でいいのか?と考え直したり熟慮したりするきっかけになる。

しかし考える時間や深さが長いほど、深いほどいいのかって言うとそうでもなく、むしろ「よし!」で決めた方が後に幸福な選択になったりもする。

死ぬのは死ぬんだがそれを持ち出してあれこれ考えているほどに私は今ふつうに平和なんだろうなとポッピングシャワーを食べながら思った。食べてる時って結構ひまだな?食べる以外してないもんな。

食べてる時に成分表を見たりカロリー計算するのは愚者だわ。素直においしく食べよう。あした死ぬかも知れないので。死なずに生きたとしても好きなもの食べた方が良いって絶対。

ずーっと正当化しながら味わってる。

2+

No.853

最初から最後まで知っている作家の長い物語をなぞっているだけのように無意味。意味を考えたものから落ちて死んでいく。真逆から見たら上って生まれ変わる。死んだ命が星になると聞いてから、ぼくは星空を見上げるたびに蕁麻疹が出る。それを綺麗だと思うのか、それを美しいと信じるのか、わかり合えない。電子も言葉も誰かが何かを伝えたかった証、途切れたものも、つながったものも、等しく「その先」を信じて一度も満たされなかった。おまえ馬鹿だよ。そういうふうに思考を拡大させてさ、何も大切にできない自分を大切にできないんだ。代償、と呼んで。傾げたぼくの首に赤いマフラーが巻かれる。おまえの首は無防備に晒される。外気にも僕にも。人目にも星空にも。誰かを疑うとき、いちばん疑われているのは自分だった。誰かを責めるとき、いちばん責めたいのは自分だった。わかってる。わかってるから。だとか、おまえは詭弁ばかり。詭弁も言えない恋人よりよっぽどいいや。もうどうでもいいや。

2+

No.852

かわいい飲み物。かわいい景色。かわいい生命。かわいい死に様。きみは何にでもかわいいをつけて綿菓子を頬張る。かわいい恋愛。かわいい現実。かわいい惨虐。かわいい一生。そうだ今度わたしかわいいところへ行くことに決めたの。それはどこ?教えないよ、秘密にしたいもん。じゃあなんで言ったの?かわいいなんてどこにもないもの、わたしそれを手に入れられないもの、だけどあなたはそんな話を聞いてくれる、だからわたし伝えたかったの。きみは明日ここにいないだろう。分かっても僕は止めないだろう。そういうところよ、かわいいあなた。かわいいわたし。かわいいふたり。かわいいひとり。かわいそうで、かわいいことね。

4+

No.851

奇跡を確認する術はない。これきっと奇跡だね。これなんて奇跡だよ。出会った人とそう確かめ合って頷いたら襲撃を恐れることなく無防備に眠るだけ。お互いの夢に害されることなく。お互いの領域を破壊することなく。気づいたときに会話をして、言葉がなくてもひとりじゃなくて。生まれた意味と死ぬことの意味を考えている。あの春が終わっても、終わらないでも。インスタントスープを美味しいねと言う、いちばん絶品だと言う、あなたのそばにいると日常全部に奇跡が飽和して、また新しい名前をつけたいと思うよ。子どもみたいな額を撫でて。

3+

No.850

ぼろぼろの紙切れを渡して
誰かが私へ宛てたのだと使者は言う
質問しようとした時にはもう
姿が消えてしまっていた

(いったいいつ 私は 目を離したろう)。

折りたたまれた紙を開いていくと
短い挨拶と近況を訊ねる言葉だけ
丁寧な薄い文字で書かれてある
差出人は誰だろう

お元気ですか
僕は元気ではありません
むしろもうすぐ星になるそうです
大人たちの吐く嘘を僕はずっと見抜いています
だけどそれは彼らの優しさなので
信じているふりをして生きています

悪戯だろう
どこからか面白がって見ているかもな
たとえば夜空の星座になって
忘れないと約束を忘れたふりをして
いま思い出したきみの名前を呼んで良い?

生きてたって変わらないよ
変わらないと思いながら生きてると
死んじゃいたくなるよ
人を好きになれないと生きてけないんだ
愛だ愛だの洪水は息苦しいだけ

使者の顔を見たよ
深く帽子をかぶっていたけれど
きみの笑い方を忘れてなかった
随分と平凡に生まれ変わったね
またいつかどこかで会えるね

3+

No.849

愛が死を超えさせる
虹も星も足下にある
日常が遠ざかるたびきみが近づいた
怖くない怖くない、怖くないよ

言い聞かせるうち夢だと気づく
目覚めた世界は明るいだろうか
誰かがぼくらを言祝ぐだろうか
また会おうよ、また会おうよ

約束を結んだことを忘れて新生する
すれ違っても思い出さないだろうな
だから人は人に優しくするんだ
だから人は人を殺さないんだ

それが自分の大切なひとかも知れないから
あなただけじゃなくぼくのことも
誰であっても自分であっても
それは誰かの大切な人になる人だから

4+