【雑記】ぬいぐるみの時代から

そんな執着とか愛着ないなあと思っていたけど、懐かしいもの見ると「ふおおお」ってなるな。行間ぎちぎちのテキストサイトとか。

読みづらっ!(だがそこがいい)みたいな。

便利できれいなものばっかりじゃなくて、行き来するものだと思う。流行とか時代の流れは。ずっとそうでしょ?知らんけど。知らんがな。だって、数十年しか生きてないものな。

1つ前だった、というだけで、小さい頃親しんだ、というだけで崇拝できるんだよ。

バーチャルリアリティに慣れ親しんだ人がおとなになった時に懐かしむものってどんなものだろうね。その先はどんなものが懐かしまれるんだろう?

私などはもはやできる限り生身の人間と接さずに生きていきたいなあと思っているので、だいたい思ってきたので、そういう考え方が迫害されることなく、まあべつにもてはやされなくてもいいんだけど、「ありだよね」ってスルーされる世の中になってほしい。みんなだよ。どの考えに対してもだよ。

「あ、うん。ありだね」って。干渉のない世界。まあ、なんだ、弊害とか出そうだが、弊害のない世界ってないでしょ。「きみの考え、ありだね。ぼくはこうだけど。じゃあね、元気でね」みたいな。

そもそも干渉したり批判したりするのって、自分のポジションが脅かされるかもしれないという意識がさせるんでない?

だったら人間同士くっつきすぎだからはなれたほうがいい。適度な間隔をあけて、ぶつからないように、いがみ合わないように、たとえば宇宙の星と星くらい。まあせめて存在してるなって分かる程度に見えてればいいんじゃないかなって思うんだけど、これはこれでいろーんな反対意見があるだろうし、私だって自分の考え方に異議をとなえることはできるぞ。

またぬいぐるみの時代がきて、バーチャルの時代がきて、ぬいぐるみの時代を生きた子がハイテクなバーチャル映像見て「ふああ・・・これこれ、これだよ。なつかしい。このころはみんな適度に隔離されていて、思いやりがあって、あったかみがあったなあ。バーチャル全盛期って、古き良き時代だよなあ。今は人間同士が近すぎていがみ合ってばかりいる」とか言うのでしょ。

デジタルもアナログも縫い目のように、出たり潜ったり、自分が今いる場所を否定するために、今いない場所を正当化して生きる希望にしたりするのでしょ。

はかない。

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No.636

夜明けから逃げる。この旅は誰にも気取られず続行する。うつ伏せた雑誌の下に表情を隠す。穏やかでいられないくらい、炭酸水が鳴いている。鏡の中じゃあなたは今もヒーローなんだ。嘘つき呼ばわりされたくないなら、一緒に行こう。鏡の中じゃあなたは今もプリマドンナ。いいえ、そんなはずはない。と、まわりは嘘ばかり吐く、うん、そうだね。嘘だよ。嘘には耳をふさごう。ぼくが牽引するパレードはやがて水平線と等しくなるよ。そうしたら夜明けから逃げ切れない人びとが、どうしたって出てきてしまって、ぼくはぼくが一番きらいな人たちがぼくに対してしたように、あなたたちを見捨てて行くんだ。薄汚れた相棒のぬいぐるみにしゃべらせる。しかたがなかった。おまえは悪くないよ。ひとりになったとしても。泣くことはないんだ、もとに戻っただけのことだろう。夢から覚めただけのことだろう。それが分かっただけでも良かったさ。ヒーローも、プリマドンナも、おまえの滑稽な一人芝居。ぼくがまだぬいぐるみだなんて、信じてるんだもの、ばかな子、悪い子、生かすことはおしおきのためだよ。薄汚れたぬいぐるみなんてどこにもいないよ。パレードなんか見ないよ、どうやって見るんだ、おまえは家から一歩も出ていないのに。

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No.635

誰のためにも生きたくなかったし、ぼくのためにも生きて欲しくなかった。約束したんだ。もしかしたら、きみはもう覚えてないだろうけど。あたり一面かすみ草の世界で。世界?いや、部屋だったのかも。かすみ草?いや、真綿だったのかも。記憶はおぼろだ。どっちでもいいや。ぼくたち、ちゃんと約束をした。誰のためにも生きないことを。きみはぼくのために生きたりしないと。逆も然り、おたがいさま。あの頃と比べたら、どうしたってノイズが増えたね。正しそうな声は優しくて。必要な叫びほどときどき耳障りで。唐突に思えるだろう。まるで発狂でもしたふうだ。ぼくたち不思議でたまらなかった。約束のない毎日、続けたって仕方がない。ぼくの苦手な椅子取りゲーム。この席をあの子にあげる。そのかわりにこの子を連れてく。いいでしょう。もう、要らないでしょう。別れが分かっていたって、誰もがさよならを言えるわけじゃない。平気、言えない時には花が降る。星が咲く。ちゃんと、ただ夢の中にかえっていく。あたたかな嘘の部屋。そう。ここにはスピーカーなんてなくて、誰の糾弾もないんだ、真実も嘘もたいして変わんないや、神さまはそうと教えなかったけど。

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No.634

変わらないものに縫い止めておくといいよ。たとえば星座とか。人の命より長ければいいよ。めぐるものでもいいね。春が来るたび咲く花だとか。忘れたい、忘れたい。願うたびに刻まれてく。遠ざかりたい、遠ざかりたい。祈るたびに距離はゼロからマイナスになる。なにも手につかない。ほんと、あなたって、ぼくをきずつけることばかりうまいんだから。わかっているのに、帰ってきちゃうんだから。忘れたい、忘れたい。遠ざかりたい、遠ざかりたい。だけどそれを繰り返すのは、他でもないぼくでしかない。あなたはいつだって忘れられたし、遠くへ行けた。ぼくの手なんか放して。

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No.633

認めたくない。だけど言わせてやんなきゃ。幸せでないあなたが好き。これからも好きでいさせてほしい。かわいそうなあなたでいてほしい。ぼくが悪さをしなくて済むように。新月の夜、なまあたたかい肉のにおいだ。花の香りと、踏みにじられた茎のにおいだ。傷を数えている。ひとつでも消えていたら困るんだ。そう、傷には名前をつけている。あなただって星には名前をつけるだろ?かんたんに覚えておけるように。物語にさえなれば消えていかない。みんなが勝手に話し伝えるから。当てようか。あなたは消えることを恐れてる。ふたりの利害が一致したんだ。それだけだから、他の名前で呼ぶのはやめておこう。完成しないパズルをつくってる。完成しないとわかってるから今もまだ人でいられる。これ以上近づいたら、生まれ変わってしまう気がするんだ。そしたらもう二度と、会えないような気がするんだ。嫌だと思う。辛いだろうと推測できる。何が成就しなくてもいい、何かが朽ちて廃れてもいい。一言も交わさないで、夢の中では笑い合ってる。だから体温なんていらない、都合のいい夜ばかりが待ち遠しい。

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No.632

なにが。ぼくに何ができる。崩れてく砂のお城をながめながら、考えてた。だれのために。誰のために。寄せて返す波を恨むくらいなら。解読されちゃいそうな暗号に舌打ちして、もう何度目のシャッフルだろう。切り開かれる傷口のむこう、縫い閉じられてく光を見た。体はただの入れ物になって、痛いも悲しいもどこにもないんだ。あなたに知ってほしい。ぼくは平気で、ぼくは穏やかで、ぼくは屑よりも細かくなって夜空に浮かぶこと、できるんだよ。血からほどかれて、骨から削がれて、花にも鳥にもなれるんだよ、って。満月、たとえば明日、あなたの中指が引き寄せるお皿の上、やがて口にする、他愛もない主食にだってなれるんだ。簡単にね。予感が重なり合い、淡い発光でしかない軌跡が、ゆっくりと明滅を始めた。繊細な感覚ばかりの世界は縫い閉じられて、まばゆい光のなかで、ぼくはあなたばかり呼んでいる。しあわせが染み込んで、絶望が淘汰される。その後に来る、圧倒的、静寂。何も。なにも、できない。

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No.631

長いと飽きると悪態、短いと儚いと憂いをこぼす。別れの断片が繰り返されて、繰り返されて、いやになるけれど忘れていける。裏切られて、裏切られて、置いてけぼりの逆再生。水平線が、夕陽に吸い込まれる。群青がやってきて、境目なんて消してしまう。空と海の。天国と地獄の。冬と春の。僕とあなたの。幸せと絶望の。夢とうつつの。だれもが境界線だと信じていたすべてが溶け合って、今がきっと感動のクライマックス。生き残った者達は景色の一部で、オーディエンスはどこにもいないんだけど。昨日と明日が、いまに溶けてく。僕やあなたが、世界に溶けてく。音楽が流れますように。耳を傾ける人がどこにもひとりもいなくても。音楽が流れますように。つぎ生まれるときに迷いませんように。

3+

No.630

生きていてもいいんだと、面と向かって言うのはあまりに傲慢だから、生きてきてよかったと、せめて感じさせたくて恋がある。ぼくにはずっとわかっていたし、なんなら見えてもいた。あなたの目に映るものがきれいで、どれだけいっても果てがなくて、名前もなくて、だから呼ばれもしなくて、だけど、だから、そこにちゃんとあるってことを。ぼくが摘んで空き瓶に挿しておいた、花に最初にふれた指があなたのものでよかった。あなたが初めて謎を覚えて、あの柔らかさはどんなだろうと純粋に駆り立てられて、手をのばした先にあるものがぼくの選んだ花でよかった。伝えたいことが、あればあるほどまわりくどいが、あなたのための、寄り道なら楽しい。初めてきこえたハミングが青空の手前で割れてしまって、曇天に吸い込まれてしまわぬように、この恋があるよ。はやく、はやく、鈍感なあなたにも落っこちてほしい。

4+

No.629

忘れないように何度も染み込ませた。嫌になったくらいで離ればなれにならないように。ぼくから剥がれ落ちたものがぼくの知らない場所でぼく以外に踏みにじられても絶対に朽ち果てないように。それには歩き始める足がないので。ただ思うことしかできないので。ぼくだけが救いなので。期待に背いて通過しないよう。月のかけらをちぎって道しるべにしたんだ。そうしたら夜は永遠に真っ暗になって、敵も味方も抱き合うしかなくなるから。かじかむ指で火薬を詰めていく。ぼくは明日、名前も知らないひとを死なすかも知れない。そんな時にも、あなたさえ忘れないでいられればと思ってる。ぼくは、ぼくだけは。あなたの名前や瞳の色を忘れない。そして今日もまた火薬を詰める。白い雪のまんなか。プレイヤーのいない戦場で。もう終わったんだ。人の声がして、たちのぼる湯気。寄り添ってくる哀れみの声。もしかするとぼくが幻なのかも知れない。もう終わったんだよ。窓の外を見るとひとひらの雪もなくて、濃いや淡いの花ばかり。三度目はもう言葉に頼れなくて、あなたはぼくを抱きしめる。爆弾になって破壊したい時間は、ミルクに溶ける蜂蜜よりも遅く甘く流れる。終わってなんかない。終わったりはしない。あなたはぼくを感じている。あんなに花が咲いているのに、指先がかじかんだままなんだ。終わらせてよ。ここへ終わりを連れてきてよ。ぼくはあなたの見る幻かも知れない。そうだといいのに。強く願った途端、やさしい薬のたくさん溶けたミルクが喉の奥に流し込まれ、もう手に負えない猛毒がゆっくりと目尻をあふれた。

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No.628

花が降る、この世の花が、白に降る、星に降る、こどもの頃に。そう。あなたを夢だと疑わなかった。だって、ちっぽけな僕にとって、こんなに早くこんなに素敵なものがあらわれるはずはないんだ。不思議で、不気味で、不可解だった。この先どんなものを差し出さないといけないんだろう。生きていくのがやになるくらいさ。だけどあなたはそこにいて、ときどき笑いかけてくれさえした。転機が訪れたのはある雨の朝、僕は子どもでもなく大人でもなかったが、あなたはずっと大人だった。それなのに僕が優位に立ったんだ。ささやかれていたんだよ、取り上げられる前に壊してしまえ。失う前に奪ってしまえ。嫌われる前に傷つけてしまえ。捨てられる前に忘れてしまえ。その声が消せなかった。そして実行した。相変わらず春が来て夏が来て秋が来て冬が来てまた春が来る。それを七回繰り返した頃。僕はついにあなたに追いついて、いま、すべての色を目に映せるよ。こんな色をしていた。怖がらせてごめんな。これからは大切にする。あなたは自分が加害者のように言うけれど、嘘だ。あなたが僕を大切にしなかった日なんて、一日だってなかった。僕がそれを忘れたことなんて、一瞬も。ああ、花が降る。この世の花が。天国にばかりとじこめておけないで。白に降る。星に降る。やましい恋を、もうひけらかして良いんだって。おまえが生きている世界でよかった。そう笑うあなたの髪に、黙って俯く僕の肩に、降りしきる、ふりしきる、この世の花の、なんて鮮明。

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