印刷ありがとうございました

マンスリーエメラルド創刊号、プリントアウトしてくれた人、ありがとうございます。わざわざコンビニへ行き、コピー機を操作して、100円いれて、持ち帰ってくれて、切り込み入れて折りたたんで、それを読んでくれて本当にありがとうございました。奇跡です。次回は月半ばくらいに出す予定です。出た時はまたよろしくお願いします。

3+

No.771

ここから先へは行きたくない。黒い霧が流れている。ぼくを見つめる瞳の気配、手も足も出せなくなる感覚。きみが手を握ったり離したりするせいで、本当のお別れなんだと分かってしまう。気づくのはぼくが先でも、準備するのはきみが早かったね。いつも。いまも。太陽があるのに降り注ぐ雨を、奇跡のように見ていた。初めてきみを見た時きっと、同じ顔をしたんだろうな。顔を上げる。誰が教えずとも、空に描かれる虹に気づけるように。きみの決断を待たずにぼくは手を離す。黒い霧が晴れたら新しいきみを見つけられる。予感だけで一歩を踏み出す。運命に出会うために糸を切った。さよならを言わなかった気がして振り返ると、陽だまりしかそこにはもう残っていなかった。

3+

No.770

絵の具を混ぜて唯一無二をつくりだそうとした神さまの試みは、既視感の連続で不発に終わった。欠けたのは新鮮、初心、慈愛と無垢。目をつけたら花を見て、口をつけたら喋り出す。彼ら彼女らへの憧憬は止まなかった。いつも。ちいさな鳥が卵を産んで、孵る前に獣に食べられても、雨は大地を潤して、虹は七色を描く。ぼくは自分になにが足りないか自覚している。それをどうやって補ったらいいのかも知っている。自分がどれほどそれを望んでいるかを。誰も望まないことを。人を傷つけない夕日や星空はない。朝は、思い出は、食卓の卵は、選ばれなかった野良猫、ぼろぼろの夢。描かなければ見なくて済んだのに。見慣れたものに飽きてしまっても、時間は巻き戻せないまま世界はリセットされる。きみの産声が正解も不正解も打ち破る、朝、美しい一日を迎えるためにそこらじゅうで絵の具を潰す。

2+

No.769

忘れていいよなんて言わない
思ってもないことを伝えたりしない
覚えておいて、覚えておいて
忘れようとしてもいいけど(無理だから)

体育館の扉が半分ひらいていて
後輩たちが駆け足で横切ったあと
輝く菜の花より鮮烈だった
非常ベルが鳴って合唱が悲鳴になった

飼い慣らされた野性が日常の
中で死んでしまおうとしていた
僕はすがったりひれ伏したりした
ここにいて、また元に戻すから

覚えておいて、覚えておいて
出会う前だと思っていた頃を
もうすでに出会っていた頃のことを
あなたの視界に入ることだけ考えていた
人差し指が非常ベルを押すのを見ていた

菜の花が燃えているのを
水族館の水槽みたく磨かれた空を
その瞳に刻まれる一瞬を
無実のあなたと逃避行とかしたかったな
だけど何にも言えなかった臆病者を忘れないで

3+

【創刊号】ネットプリントできます【9/17まで】

マンスリーエメラルド創刊号

創刊号です。コンビニのコピー機から印刷できます。

ここに投稿した詩や小説から選んだものを折り本にしています。今回は、2019年8月投稿分からセレクトしました。書き下ろし作品はありませんが、あとがき1P書きました。読んでもらえると嬉しいです。

※コンビニによって予約番号違うのでお間違い無いように!

セブンイレブン】

  • プリント予約番号:13381203
  • ファイル名:201908_monthly_emerald
  • ファイルサイズ:A3
  • 枚数:1
  • 料金:100円(印刷代のみ。収益にはなりません)
  • 有効期限:2019/09/17 23:59
  • 店舗でのプリント方法

ファミマ・ローソン・セイコーマート】

  • ユーザー番号:QF7LFDHM4N
  • ファイル名:201908_monthly_emerald
  • ファイルサイズ:A3
  • 枚数:1
  • 料金:印刷代のみ。たぶん100円くらい。
  • 有効期限:2019年09月18日 08時まで
  • 店舗でのプリント方法

折本の作り方はこちらが参考になります。

画像出典:こはぎうた | ネットプリント(そして折本)の作り方

表紙の写真は、この本つくってる時に出た虹です。すごいだろう。

7+

No.768

雨雲の切れ間からバター色の光がさしている
映画ならあの光は兆しかもしれない
群像劇ならあの光はフラグかもしれない
ぼくは今日運命の相手と出会うのかも

日常に点を散りばめて線にするのをもったいぶった
時間は砂のように流れて光景をつくりかえてった
登場人物は変えないまま少しずつ少しずつ
ドラマチックはぼくの上を素通りした

どんな思いで気持ちを伝えてくれたんだろう
卒業式が終わった後のワンシーンを繰り返す
本当に桜が舞っていたのか、身長差は違わないか
もう分からないしそもそも捏造込みの回想だとしても

光はさしていた
今ぼくが何気なく見上げた空にあるような
光が確かにさしていた
特別じゃないもののような顔をして
今さら気づいたのとでも言いたげに

線は後から結ぶものなんだろう
点を散りばめたことはないんだろう
その証拠に振り返れば道だけがある
つないだ手からは光のように血が流れる
人が変わっても名前が変わっても

2+

No.767

一枚の絵に、知る限りの青をのせた。

永い夢から醒めた青。
色彩から隔たった青。
夜と夜明けをつなぐ青。
境界線に生まれ出づる青。

ぼくはぼくの名前をつけるけど、きみはきみの呼びかたでいい。どの青がどんなふうに映るかは、きみの瞳によるところだから。それぞれの瞳が感じることだから。

過ぎ去った時間を取り戻せないと分かるのは、同じぶんの時間で形を成した人に出会ったとき。彼らは前触れもなく現れて言った。
「なにも特別なことではないよ」。
賞賛したい、諦めたくない、何も無くてただ自由でいたことを、認めたくない。ほとんどの当たり前が、ぼくにはできない。

誰かを愛すること、自分の弱さを受け入れること。どちらが欠けても後悔が生じる。どちらを満たしてもまたべつの後悔が生じる。

見下した世界がたちまち無数の青に染まってく。ぼくが描き出す青など飲み込まれてしまう。唯一無二なんて幻だ。幻だと知るところから、また始まっていくんだ。

風が吹いてキャンバスの埃をさらっていく。
きみが笑った。
ひるがえった屋上のシーツの裏側で。
いつかのぼくがそうしたように。

3+

No.766

いつでも会えると思っていると
いつまでも会わないまま終わりそう
終わりそうな命であることに例外はなく
つないだ手を離す理由を天気のせいにした

僕を見るあなたの目が優しくて
求められてもないいいわけを披露する
聞き苦しい話を遮らず聞いてくれた
こんな人が僕といてくれたのか

世界には完璧なものが多くて
少なくとも多いように僕には見えて
あなたもそのうちの一つだと
思ってたんだ、誤解を解いて

色とりどりの魚が泳ぎ
水槽越しに見つめあったふたりは
たまに隠されながら
文字や思いを泡にして遊ぶ

やがてあなたは謎を一つ明らかにする
僕が誤解を解いたお返しだと言う
何を拠り所にして凪いでいられたのか
壊れそうだから壊されたかったと告白される

5+